介護報酬のインターネット請求には、介護保険サービスを提供する事業者が国民保険団体連合会(以下、「国保連合会」という)へ直接請求する方法と、請求業務を代行してもらう方法(代理人請求)の2種類があります。
代理人請求では、代理人が1つの電子証明書で複数の事業所の請求をまとめて行うことができるため、複数の事業所を運営する法人、介護保険サービスだけでなく、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを提供している事業所などでも、電子証明書の発行手数料を抑えることが可能です。ここでは、介護報酬請求の代理人請求を始める際の準備と請求実施の流れについて紹介します。

介護報酬の代理人請求とは

介護保険サービスを提供した事業者は、その費用(報酬)の1割(または2割*)をサービス利用者から徴収し、残りの9割(または8割*)を国保連合会に請求します。
事業者は、毎月10日までに手続きに必要な書類をそろえ提出する必要があり、不備があれば報酬の支払いが遅れてしまうため、介護報酬の請求には慎重な姿勢で臨む必要があります。

大規模な事業所や一つの事業所で複数のサービスを提供する事業所などでは、介護報酬請求業務が大きな負担となりがちですが、代理人請求を活用することでその負担を軽減することが可能です。
介護報酬の代理人請求は、本来それぞれの事業所ごとに行う介護報酬請求業務の全てを代理人に委任するもの。代理人となれるのは、代理人請求を請け負う民間の請求事務取扱業者のほか、複数の事業所を運営する法人本部(本店)等の請求担当者、または地方自治体です。
委任契約を結ぶと、事業所は、その契約期間内において介護報酬の請求や状況照会、請求取消依頼・請求取下げ依頼、通知文書取得の処理を行うことができなくなってしまいますが、煩雑な業務に時間を費やすことなく介護報酬の支払いを受けることができ、業務の効率化やコスト削減につながる可能性があります。

(*2018年8月から一部利用者は介護保険利用料3割負担になる場合もあります。)

代理人請求の仕組み

介護報酬の代理人請求は、あらかじめパソコンにインストールした専用ソフトと、インターネット上のシステムを使い行われます。請求業務を委任された代理人は、インターネット回線で結ばれる 電子請求受付システム を介し、国保連合会へ報酬の支払いに必要なデータを送信することで、報酬を請求することができます。国保連合会での審査が無事終了すると、代理人は支払額決定通知書を取得し事業所へ受け渡します。事業所には、指定の月日までに報酬が支払われます。

代理人請求を行うために用意するもの

代理人請求を行うには、インターネット請求の動作環境を満たしたパソコン(OS:Microsoft Windows10/Microsoft Windows8.1/ Microsoft Windows7/ブラウザ:Internet Explorer11/通信回線:インターネット回線(ADSL以上を推奨))*と、請求データ送信専用ソフトまたは伝送サービスの契約が必要です。
専用ソフトには、国保中央会伝送通信ソフト(ニップクケアサービスが提供する介護ソフト「楽すけ」購入者にはもれなく添付)、伝送サービスには「けあ蔵国保連伝送サービス(ニップクケアサービスパートナー企業商品)」など様々な種類があります。

*介護電子請求受付システムを利用する際に、必要となる動作環境の詳細は以下のページをご参照ください(外部サイト)
https://www.kaigo.e-seikyuu.jp/dairinin/dousakankyou_dairinin.html

代理人請求実施の流れ

代理人請求を依頼する介護保険事業所または障害者総合支援事業所は、指定の届を国保連合会に提出し、「電子請求登録結果に関するお知らせ」を取得します。

事業者から委任を受けた代理人は、電子請求受付システム(http://www.e-seikyuu.jp/)にアクセスし、インターネット上で代理人情報申請を行います。国保連合会は、これを確認・承認し代理人に対し電子請求受付システムの使用に必要なユーザーID等を発行・通知します。

続いて代理人は、受け取ったID等を使って電子請求受付システムにログイン。ログイン後のお知らせに通知される「代理人登録結果に関するお知らせ」を取得し、電子証明書発行用のパスワードを確認します。その後、手順に従って代理人情報の追加申請とともに、「証明書」のメニューから電子証明書発行の申請を行います。
数日以内に電子証明書発行のためのパスワード等が届きますので、内容を確認し手順に従い電子証明書のインストールを行います(電子証明書1通に対し、100事業所まで紐付けすることが可能です)。
なお、法人本部等の請求担当者が複数の事業所の報酬をまとめて請求する場合も同様の手順となりますが、事業所が複数の都道府県を跨いでいる場合は、都道府県ごとの国民保険団体連合会へ申請手続きを行い、それぞれID等取得する必要があります。

事業所が代理人との契約から、実際に代理人請求できるようになるまでの期間は概ね1ヶ月。準備が整ったら、事業所の担当者は請求に必要な情報を代理人へ送り、代理人は、国保連合会へ作成したデータを送信。承認された報酬の支払額決定通知書を取得したら事業所へ受け渡すという流れで毎月請求業務を行っていきます。
なお、代理人が伝送ソフトを利用して請求するのではなく、伝送サービスを契約し請求業務を行おうとする場合は、伝送サービス運営企業が代理人として電子証明書を取得し、請求業務を行う事業所には、サービス独自のIDを伝える流れになっています。

度重なる報酬改定により、介護報酬請求業務は年々煩雑化しています。特に報酬改定の時期は、大変短い時間のなかで新しい報酬制度に対応しなければならず、負担が過重となりがちです。代理人請求の活用により請求担当者の負担を軽減するとともに、運営全体の効率化とコスト削減を検討してみてはいかがでしょうか。

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