介護予防・日常生活支援総合事業(以下、「総合事業」という)では、「介護の入り口」にある高齢者に対して適切なサービスが提供されるよう新しい仕組みが導入されます。既存の 介護サービス 事業者に加え、地域に根ざして活動するボランティアやNPO団体、民間企業などもサービスの提供者として参入できるようになるため、一人一人のニーズに沿った柔軟なサービスが展開されることが期待されています。ここで、総合事業の具体的なメリット、デメリットを紹介していきましょう。

総合事業に移行するメリット

総合事業移行により、既存の介護サービス事業者側にもさまざまなメリットが生まれます。

まず挙げられるのが、サービス利用対象者が要支援、要介護認定 を受けた高齢者に限定されなくなるため、サービス利用対象枠の拡大が見込めるということ。

そして、拡大することにより新たなニーズに対応したサービスの創出が不可欠となりますが、それ自体が従業員のモチベーション改善の要因となりサービス全体の質向上に繋がっていきます。

また、これまで関わりを持って来なかった組織、団体との連携が強化され、相談に対して効率的かつスピーディーな対応が可能となるでしょう。

総合事業に移行するデメリット

総合事業移行に伴うデメリットも見逃せません。新たなサービス提供者が加わり、サービスが多様化するのは大変喜ばしいことですが、事業者としては、利用者に対するサービス内容の説明が大変になるなどの業務負担が見込まれます。

幅広い対象者に対し、個別性の高いサービスを提供する上で欠かせない業務とはいえ、従業員の理解と協力が欠かせません。
さらに、総合事業では、市町村が地域の特性に配慮しながら独自の単価を決定するため、これまで以上に報酬単価が引き下げとなる恐れがあると言われています。

例えば、通所介護では認知症対応機能をはじめとしたサービス別加算で収益を確保する対応策が考えられますが、それだけでは経営を維持できず、介護サービスからの撤退を余儀なくされる事業所が増えることも予測されます。

早期に移行するメリット

平成29年(2017年)3月末までに、全ての自治体において該当する予防給付を総合事業へ移行しなければいけません。

移行の時期は、自治体によって異なるため、既に移行を完了させた自治体もあれば、平成29年3月末まで現行の体制を継続する自治体もあります。

ただし、総合事業では、早期に総合事業へ移行した自治体の費用負担及び事務手続き負担を軽減しようとする制度が導入されているため、早く導入した自治体ほど有利に新制度への移行を進めることができます。

そして、事業者側も同様にケアマネジメントに必要な人材の育成、地域ニーズの調査による新規事業の創出など、本格的な移行時期を迎えるまでに余裕を持って体制を整えることができるメリットがあります。

日常生活に不安を抱えながらも公的な支援を受けられず、要介護状態、あるいは閉じこもり生活に陥っていく高齢者は決して少なくありません。総合事業の導入により、このような高齢者を地域全体で支える仕組みが強化されることが期待されますが、業務負担や経営面への影響に配慮しながら進めることが重要です。

こちらの記事を読むとより「介護予防・日常生活支援総合事業」について詳しくなります