各市町村では、高齢者を地域住民が一丸となって支える「地域包括ケアシステム」の実現に向け、平成27年度から4つの事業が新たに導入されています。その中でも、介護予防や比較的元気な高齢者の社会参加を促進する「介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」)」は、地域包括ケアシステムに欠かせない住民互助の体制を整備・強化する上で欠かせない取り組みと位置付けられています。
今回は、地域包括ケアシステムと総合事業、この2つの関係性について見ていきましょう。

地域包括ケアシステムの概要

要介護状態になっても、誰もが住み慣れた地域で最後まで暮らせる社会の実現に向けて、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達し、介護を必要とする高齢者の数が最も多くなる2025年を目処に支援体制の構築が進む「地域包括ケアシステム」。

地域包括ケアシステムでは、地域生活の基盤となる「医療・介護・保健(病気や障害の予防)・生活支援・住まい」の5つの要素が相互に連携しながら、切れ目なくサービスが提供されることが求められます。

例えば、重い病気や障害を抱えながら自宅生活を送る人であっても、要請があれば概ね30分以内にサービスが提供されるよう、中学校区を目安とした日常生活圏域内に、さまざまなサービス、支援事業、コーディネーターなどを配置していきます。

また、地域包括ケアシステムの対象者は、当面、高齢者及び障害者を展開するとしていますが、将来的には、赤ちゃんからお年寄りまで、対象世代が拡大される見込みです。

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地域包括ケアシステム実現に向けた「地域づくり」

地域包括ケアシステムの構築にあたり、各市町村では、住民のニーズ及び地域の課題を十分に把握するだけではなく、課題解決に向けたマネジメント機能の強化や、活用可能な社会資源・マンパワーを引き出すための準備を段階的に進めていく必要があります。

その一助となるのが、平成27年4月から順次導入されている総合事業です。総合事業は、いわば地域包括ケアシステム実現に向けた「地域づくり」。既存の枠組みにとらわれず、地域の実情に応じた柔軟なサービスを展開することにより、地域住民が安心して生活できる環境の整備を主眼としています。

互助の必要性

地域包括ケアシステムの推進において最も重要視されるのが、ご近所付き合いや町内会、住民ボランティア活動をはじめとした、住民「互助」の考え方です。

互助は、税金や住民による費用負担が生じないため、社会保障費の抑制に繋がるのはもちろんのこと、今後増加が懸念されている認知症高齢者の見守り、単身高齢者の安否確認、生活支援など、潜在化しがちな住民ニーズや地域課題の発掘にも繋がっていくものです。

高齢者の参加

互助の取り組みは、健康寿命の延伸を図る上でも欠かせない要素です。健康寿命とは、医療的なケアを必要とせず健康な状態で日常生活を送れる期間を指します。

特に高齢者では、外出機会やご近所付き合い、料理や庭作業などの生活関連動作に従事する時間の減少が、病気や要介護状態の引き金となりやすいとされているため、比較的元気なうちから日常生活の範囲を拡大する意識が必要です。

地域包括ケアシステムの推進により、高齢者が積極的に社会活動へ参加し、役割や生きがいを持って生活を送れるようになることが期待されています。

さまざまな主体による介護予防

地域包括ケアシステムの構築に向けて導入が進む総合事業では、住民、市町村、介護事業者、民間企業、ボランティア団体の連携を強化し、各種サービス及び介護予防事業の内容充実を図る「協議体」と、「生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)」を配置するよう、各市町村に義務付けています。

このうち、生活支援コーディネーターは、さまざまな主体が一体となって機能するよう、高齢者のニーズと各種サービスのマッチングや地域に不足するサービスの創出、担い手の育成などの役割を担います。

地域包括ケアシステムの基盤づくりを担う総合事業では、高齢者の健康と暮らしを守るサービスを行政主体から住民主体へ移行させ、住民同士の助け合いや、比較的元気な高齢者の社会参加を促進させる狙いがあります。市町村によって、地域の実情や高齢者のニーズが異なるため、それらを的確に把握した上で新しい仕組みを整備することが重要です。