医療・保健・福祉などのさまざまな側面から高齢者の暮らしを支える「総合相談窓口」としての役割を担う 地域包括支援センター。新しく導入される 介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」という)においては、病気や障害、介護認定の有無に関わらず相談を受付け、要介護状態の予防・改善に繋がるケアプランを策定。相談者のニーズや心身の状況、生活環境に応じた適切な 介護サービス または地域支援事業の提案、調整を主な業務としています。ここでその具体的な役割を詳しく見ていきましょう。

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターでは、その地域に暮らす高齢者の健康上の問題をはじめ、日常生活上のあらゆる相談に応じています。保健師や社会福祉士の他に、介護支援専門員(ケアマネージャー)も在籍しているため、介護保険制度を使う場合にのみ利用できる施設と思われがちですが、介護だけではなく、健康、医療、福祉などさまざまな分野から、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自立生活を営めるようサポートを行なっています。

既に要支援認定を受けた高齢者や、近い将来に要支援、要介護となると予測される高齢者に対し、介護保険制度を使ったサービスや地域で開催される介護予防教室への参加を促すなど、高齢者の介護予防を支援するのも重要な業務の1つです。相談に訪れた高齢者が、引き続き安心して暮らせるよう、関係機関と連絡、連携を図りサポート体制を強化する働きかけも行なっています。

また、認知症などにより金銭管理に不安があるなどの高齢者をサポートする成年後見制度の利用や、高齢者虐待、詐欺被害への対応(権利擁護支援)も、地域包括支援センターで受けることができます。

総合事業における役割

では、総合事業においては、地域包括支援センターはどんな役割を果たせるのでしょう?
具体的には以下のようなことが挙げられます。

相談窓口となる

総合事業による訪問型サービス、通所型サービスまたは介護予防事業の利用に関する相談は、まずはじめに、利用者が住む地域にある地域包括支援センターに寄せられます。地域包括支援センターでは、それらの相談に応じ、対象者の心身状態や日常生活の様子を把握する「基本チェックリスト」の結果内容に基づき対象者に必要な処遇を検討します。

介護予防ケアマネジメントの実施

介護サービスまたは介護予防事業の利用が適切と判断された者に対し、さらに詳細な アセスメント を行い、介護予防や自立生活に向けた支援計画を策定します。

関連記事:「介護予防・生活支援サービス事業の目的と事業内容」

地域ケア会議の実施

地域包括支援センターへ相談に訪れた住民の支援を通じ明らかになった地域の課題や高齢者のニーズ、地域資源の活用を通じた好事例などを共有する「地域ケア会議」を企画・運営します。地域ケア会議には、医療・保健・介護の分野のみならず、地域住民を含む幅広い分野から参加者を募り、高齢者が暮らしやすい地域作りに向けた意見交換、課題解決を推進していきます。地域ケア会議は、2025年を目処に本格的に導入される「地域包括ケアシステム」においても、中心的な位置付けがされています。

地域リハビリテーション活動支援事業の支援

通所施設、地域ケア会議、介護予防教室などにリハビリテーション専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)を派遣し、高齢者の心身機能や自立生活の可能性を評価したり、日常生活改善に向けた具体的な助言、指導を行うことで介護予防事業を総合的に支援します。

地域包括支援センターでは、高齢者が抱える要支援・要介護リスクを早期に発見し、健康で自立した生活を営めるよう支援を行います。総合事業においては、民間企業やボランティア団体、地域住民など多様な主体を巻き込みながら、高齢者が暮らしやすい地域づくりに欠かせない存在として、地域包括支援センターの活躍が期待されています。