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2015年4月に、介護報酬が大幅に改定されました。2000年に制度が開始されて以降、5回目となる今回の改定では、2006年以来の大幅な報酬削減となったことは、既にご存じかもしれません。介護職員に対する処遇改善(+1.65%)、中~重度の要介護者や認知症高齢者へのサービス(+0.56%)などについては加算が認められた一方、サービスの基本報酬の適応は4.48%の引き下げとなり、各事業所ではサービス内容の見直しや、経費削減への着手が求められています。今回は、2015年度の介護報酬改定において、押さえておくべきポイントをご紹介していきます。

2015年介護報酬改定の背景と基本方針

介護報酬は、限られた財源の中で将来を見据えた最良なサービスが提供されるよう、3年ごとに見直しが行われています。今回の改定では、増え続ける社会保障費と、少子高齢化を背景とした介護人材の確保。さらには、団塊の世代が後期高齢者となる2025年度に向け、本格的な地域包括ケアシステムの構築を推進する意図が基本方針に込められています。

今回の改定で最も注目を集めたのが、サービス単価の改定率です。介護報酬単価は全体で2.27%の引き下げとなり、「ほぼ在宅、ときどき入院」の考え方をより明確に示す内容となりました。例えば、中~重度以上の要介護者や認知高齢者へのサービスや、在宅生活や社会参加を促すリハビリテーションを実施する事業者では、より手厚い報酬が得られるよう単価が引き上げられています。その一方、利益率が高いと言われていた特別養護老人ホームや、小規模デイサービスの報酬は、引き下げとなりました。

いまだ深刻な問題となっている介護人材の確保に関しては、「介護職員処遇改善加算」という制度が期待できます。旧名は「介護職員処遇改善交付金」という名称で、介護職員の賃金引き上げを可能とする制度です。平成27年より新たに見直しが行われ、介護職員の職務内容や職責に応じた賃金体系を整備している事業所、スキルアップを目的とした研修制度が充実した事業所に対して、より多くの加算がされるようになりました。

介護報酬改定による事業所への影響と対策

介護報酬改定の対策として、まずは介護職員処遇改善加算の拡充により、介護報酬単価の減額分を補う方法が考えられるでしょう。各事業所では、より明確な賃金体制や一人ひとりの能力を評価する仕組みづくりが求められます。同時に、介護職員が研修を受けるチャンスや、介護福祉士、ケアマネージャーなどの資格試験にチャレンジできる環境づくりにも取り組まなければいけません。

しかしながら、介護職員処遇改善加算だけで、今回の単価減額を補うことは困難な事業所が多いのが現状です。そのため、より介護度が高い利用者を獲得して加算報酬を得る、開所日を増やして収益をアップさせるなどの対策が、急務となっているでしょう。また、地域住民や関連団体との連携により、マンパワーやサービス内容を充足させていくというのも、ひとつの方法です。

2015年の介護報酬改定により、廃業を余儀なくされる事業所も少なくありません。しかし、地域の介護事業所がひとつなくなれば、介護を必要とする高齢者が行き先を失う「介護難民」の問題を助長してしまいます。報酬改定の影響をできるだけ早期に解消できるよう、事業の見直しや経費削減を進めていきましょう。

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