介護事業全体として0.54パーセントのプラス改定が示された2018年度の報酬改定。自立支援や介護の重度化予防に貢献するサービスを中心に報酬の引き上げが行われる一方、依然として全体の平均を上回る収支差率(利益率)を保つ通所介護では、2時間ごとに区切られていたサービス提供時間区分が1時間ごとに細分化され、短時間のサービス提供ほど、より基本報酬の引き下げが行われることとなりました。
特に大規模型通所介護事業所では、大幅な収益減少が見込まれるため、介護ロボットの活用や介護職員処遇改善加算によるコストの見直しを含め、改定の影響を最小限に止める対策を練る必要があるでしょう。

過去の通所介護に関する改定

まず、これまでの通所介護に関する改定についておさらいしてみましょう。
介護保険法 は、5年に一度、法の内容を見直すとしています。2000年の介護保険法施行後、はじめて実施された2005年度介護保険法改正では、膨らみ続ける社会保障費の抑制と制度の持続、明るく活力のある超高齢社会の構築をめざし、介護予防と自立生活支援を主眼とした制度の見直しや新たな施策が導入されました。
なかでも要介護区分を5区分(要介護1〜5)から要支援1・2を加えた7区分とし、要支援1・2の方を対象とした介護予防サービス(予防給付)が新設されたのは、通所介護事業所の運営に大きな影響を与えました。

さらに2015年度の介護保険法改正では、介護予防通所介護を含む要支援者向けサービスの一部が市町村独自の事業(介護予防・日常生活支援総合事業)へ移行することが決まり、それまで全国一律の基準・報酬で提供されていたサービスが自治体の裁量で内容や利用料を設定できることになりました。同時に、基本報酬が大幅に引き下げられたことから、経営的に不安定となる通所介護事業所が相次いだことは記憶に新しいでしょう。

2018年の通所介護の報酬見直し

そして診療報酬・介護報酬の同時改定となった2018年度改定では、地域包括ケアシステムの構築、介護予防および在宅医療、ターミナルケアの推進に向けた介護サービスの実現、人材の確保といった方針のもと一部の報酬加算要件の緩和あるいは引き上げなどの見直しが行われています。
また、通所介護の基本報酬においては、大規模事業所の報酬が引き下げられるとともに、サービス提供時間区分が1時間ごとに細分化され、サービス提供時間が短いほど報酬が引き下げられました。
例えば、要介護3の利用者に対し、3時間以上5時間未満の時間区分で3時間以上4時間未満サービスを提供していた場合の基本報酬は、地域密着型通所介護で現行552単位が527単位、通常規模型事業所で493単位が470単位、大規模型通所介護(Ⅰ)で485単位が453単位、大規模型事業所(Ⅱ)で472単位が438単位へ。
4時間以上5時間未満サービスを提供していた場合は、地域密着型通所介護、通常規模型事業所で現行を維持、大規模型事業所(Ⅰ)で485単位が477単位へ、大規模型事業所(Ⅱ)で472単位が459単位に引き下げられることが決まっています。

ただし今回の改定では、事業の規模にかかわらず介護予防や生活機能の向上および外部機関・専門職との連携を強化することにより、加算報酬を得られやすい仕組みが新設されています。
例えば、通所リハビリテーション施設に所属する医師・理学療法士・作業療法士等が通所介護施設を訪問し、利用者の アセスメント および個別機能訓練計画を作成することにより請求可能な「生活機能向上加算」、利用者の日常生活動作改善の度合いが一定の水準を超えた場合に請求可能な「ADL維持等加算(アウトカム評価)」は、ぜひとも導入したい項目でしょう。今後の改定で、生活機能の向上に向けた機能訓練や ADL の維持・改善を目的としたサービスを取り入れない事業所は、基本報酬が引き下げられるなどの措置が取られることも予測されるため、早々に体制を整えておきたいものです。

介護報酬引き下げへの対応策

介護報酬引き下げによる収益減少が見込まれる事業所では、前項で紹介した生活機能向上加算およびADL維持等加算以外にも、介護職員処遇改善加算の申請も対策として挙げられます。ただし、介護職員処遇改善加算については、今回の改定で比較的要件の低い加算Ⅳ・Ⅴが廃止となるため、より高い要件をクリアすべく事業所内の体制整備が求められます。

要介護者の見守りや移乗や排泄介助にかかる負担を軽減する介護ロボットの活用により、労働環境の改善や人手不足の緩和を測った場合に、人員基準の緩和や報酬を加算するといった議論も進められています。今回の改定では、主に施設介護における夜間業務に対し人員基準の緩和要件が新設されましたが、今後さらに拡充していくことが予測されるため、事業所内のICT環境の整備を含め早々に検討することをお勧めします。

また、介護報酬請求業務にかかるコストの見直しも急務でしょう。ニップックケアサービスが提供する介護ソフト「楽すけ」は、年々複雑化する制度改定にも速やかに対応。業務効率の改善はもちろんのこと、ランニングコストの軽減にも貢献します。パソコンの操作が苦手な方にもわかりやすい仕様となっていますので、この機会にぜひご検討ください。

介護報酬改定はサービス内容によって売上に大きく影響しますが、事業所がコントロールできることではありません。各事業所では、今回の改定の意図や内容をよく把握し業務体制を整備することが大切です。介護事業者の方は、事業所全体の支出の見直しを行うなどして経営を安定させていきましょう。

2018年通所介護報酬改定新旧比較表

3時間以上4時間未満の単位数(1回につき)

地域密着型通所介護 通常規模型通所介護 大規模型通所介護(Ⅰ) 大規模型通所介護(Ⅱ)
2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後
要介護1 426 407 95.5% 380 362 95.3% 374 350 93.6% 364 338 92.9%
要介護2 488 466 95.5% 436 415 95.2% 429 401 93.5% 417 387 92.8%
要介護3 552 527 95.5% 493 470 95.3% 485 453 93.4% 472 438 92.8%
要介護4 614 586 95.4% 548 522 95.3% 539 504 93.5% 524 486 92.7%
要介護5 678 647 95.4% 605 576 95.2% 595 556 93.4% 579 537 92.7%

4時間以上5時間未満の単位数(1回につき)

地域密着型通所介護 通常規模型通所介護 大規模型通所介護(Ⅰ) 大規模型通所介護(Ⅱ)
2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後
要介護1 426 426 100.0% 380 380 100.0% 374 368 98.4% 364 354 97.3%
要介護2 488 488 100.0% 436 436 100.0% 429 422 98.4% 417 406 97.4%
要介護3 552 552 100.0% 493 493 100.0% 485 477 98.4% 472 459 97.2%
要介護4 614 614 100.0% 548 548 100.0% 539 530 98.3% 524 510 97.3%
要介護5 678 678 100.0% 605 605 100.0% 595 585 98.3% 579 563 97.2%

5時間以上6時間未満の単位数の単位数(1回につき)

地域密着型通所介護 通常規模型通所介護 大規模型通所介護(Ⅰ) 大規模型通所介護(Ⅱ)
2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後
要介護1 641 641 100.0% 572 558 97.6% 562 533 94.8% 547 514 94.0%
要介護2 757 757 100.0% 676 660 97.6% 665 631 94.9% 647 608 94.0%
要介護3 874 874 100.0% 780 761 97.6% 767 728 94.9% 746 702 94.1%
要介護4 990 990 100.0% 884 863 97.6% 869 824 94.8% 846 796 94.1%
要介護5 1107 1107 100.0% 988 964 97.6% 971 921 94.9% 946 890 94.1%

6時間以上7時間未満の単位数(1回につき)

地域密着型通所介護 通常規模型通所介護 大規模型通所介護(Ⅰ) 大規模型通所介護(Ⅱ)
2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後
要介護1 641 662 103.3% 572 572 100.0% 562 552 98.2% 547 532 97.3%
要介護2 757 782 103.3% 676 676 100.0% 665 654 98.3% 647 629 97.2%
要介護3 874 903 103.3% 780 780 100.0% 767 754 98.3% 746 725 97.2%
要介護4 990 1023 103.3% 884 884 100.0% 869 854 98.3% 846 823 97.3%
要介護5 1107 1144 103.3% 988 988 100.0% 971 954 98.2% 946 920 97.3%

7時間以上8時間未満の単位数(1回につき)

地域密着型通所介護 通常規模型通所介護 大規模型通所介護(Ⅰ) 大規模型通所介護(Ⅱ)
2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後
要介護1 735 735 100.0% 656 645 98.3% 645 617 95.7% 628 595 94.7%
要介護2 868 868 100.0% 775 761 98.2% 762 729 95.7% 742 703 94.7%
要介護3 1006 1006 100.0% 898 883 98.3% 883 844 95.6% 859 814 94.8%
要介護4 1144 1144 100.0% 1021 1003 98.2% 1004 960 95.6% 977 926 94.8%
要介護5 1281 1281 100.0% 1144 1124 98.3% 1125 1076 95.6% 1095 1038 94.8%

8時間以上9時間未満の単位数(1回につき)

地域密着型通所介護 通常規模型通所介護 大規模型通所介護(Ⅰ) 大規模型通所介護(Ⅱ)
2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後 2018年3月まで 2018年4月~ 改定前/改定後
要介護1 735 764 103.9% 656 656 100.0% 645 634 98.3% 628 611 97.3%
要介護2 868 903 104.0% 775 775 100.0% 762 749 98.3% 742 722 97.3%
要介護3 1006 1046 104.0% 898 898 100.0% 883 868 98.3% 859 835 97.2%
要介護4 1144 1190 104.0% 1021 1021 100.0% 1004 987 98.3% 977 950 97.2%
要介護5 1281 1332 104.0% 1144 1144 100.0% 1125 1106 98.3% 1095 1065 97.3%