2016年3月末時点で、利用定員が18人以下の小規模な通所介護事業所は「地域密着型通所介護事業所」として地域密着型サービスに移行されました。もともと定員が18人以下であれば、改めて指定申請をする必要はありませんが、利用定員を変更する場合や、法人の定款に地域密着型サービスの記載がない場合は、所定の手続きが必要です。
ここでは具体的な手続きの方法や、他の選択肢も含めて紹介していきます。

小規模通所介護事業所の地域密着型通所介護事業所への移行

2014年6月に公布された「地域における医療および介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」の規定により 介護保険法 が改正され、通所介護の一部が、新設された「地域密着型通所介護」へ移行されました。

通所介護のうち、地域密着型通所介護へ移行するのは、定員が18人以下の小規模型事業所。これらの事業所は、地域住民と一体となって運営される必要があると判断され、各市町村を中心に実施される地域支援サービスの1つとして位置付けられました。

利用者へ提供するサービス内容そのものに大きな変更は生じませんが、地域との連携を強化し、その透明性を確保する目的から、利用者、利用者家族、地域包括支援センター、地域住民、地域密着型通所介護について知見を有する人たちで構成される「運営推進会議」の実施が義務付けられます。

運営推進会議は、概ね6カ月に1回以上開催し、参加者から要望や助言を受ける機会を設けるものです。
この他にも、法人の定款(事業目的)に地域密着型サービスの記載がない場合は、定款を変更し所轄の法務局へ提出するなど、所定の手続きが発生する場合があります。

利用定員の考え方

地域密着型通所介護の要件となる「利用定員18人以下」とは、実際に届出をしている「指定通所介護事業所の利用定員」を指します。

つまり、事業所全体において「同時」に通所介護サービスを提供できる「利用者数の上限」による判断が必要です。
例えば、利用定員が20名の事業所において、午前中に10名(1単位目)、午後に10名(2単位目)を実施している場合は、1日の利用者数は20名ですが、各単位ごとの定員が18名以下なので、地域密着型通所介護に該当します。なぜなら利用時間が異なる場合は、利用定員は合算しないからです。

地域密着型通所介護への移行以外の選択肢

地域密着型通所介護の移行以外の選択肢はあるのでしょうか?――

大規模型または通常規模型に変更

利用定員18名以下の事業所においては、地域密着型通所介護へ移行せず、定員を19人以上の大規模型または通常規模型に変更することができます。
大規模型または通常規模型にする場合は、必要な人員・施設基準など、指定を受けるための要件を満たした上で、所轄の都道府県へ新規申請を行います。また、2016年4月1日以降は、市町村への事業所廃止申請手続きも必要になります。

通常規模型または小規模多機能型居宅介護のサテライトに

他に、同一法人が運営する定員19人以上の通常規模型または 小規模多機能型居宅介護 のサテライトとすることも可能です。
その場合は、通所介護事業所を廃止する日の1カ月前までに廃止申請を行い、各市町村の指導のもと、新規申請を行います。なお、地域密着型通所介護の指定を受けず事業所を廃止することも可能です。その場合は、都道府県および市町村に対し廃止申請を行います。

みなし指定の有効期間および範囲

地域密着型サービスへの移行に伴い、2016年3月末時点において定員18人以下の小規模型通所介護事業所の指定を受けている場合は2016年4月1日に地域密着型通所介護事業所として指定があったものとみなされます(=みなし指定)。

みなし指定の有効期間は、通所介護の指定を受けた日から6年経過した日までとされていますので、それ以降については、更新申請を行う必要があります。

また、地域密着型サービスは、事業所が所在する市町村の住民のみが利用可能なサービスと規定されているため、移行後は、原則、他市町村からの利用者を受け入れることができなくなります。
ただし、地域密着型通所介護のみなし指定を受けた事業所においては、2016年3月末時点で市町村外からサービス継続していたケースに限り従来通りサービスを提供することができます。

地域密着型サービスは、各市町村ごとに規定が定められています。そのため、事業内容を変更する際は、厚生労働省のホームページ等で確認できる通達内容を確認するのはもちろんのこと、あらかじめ担当窓口に相談し、時間に余裕をもって準備を進めることをおすすめします。