高齢化率の上昇、人口減少社会を背景に、介護現場の人手不足や介護者の負担軽減を目的とした「介護ロボット」の活用が注目されています。
「導入費用がかかる」「介護は人がするもの」といった理由から導入に消極的な意見も少なくなく普及の妨げとなっていましたが、介護ロボット活用による人員配置基準の緩和や報酬加算など、介護ロボットの開発・普及を後押しする制度が導入されることになり、需要が高まることが予測されています。

介護ロボットとは?

厚生労働省が発表した資料によると、情報感知・判断・動作の3要素を有し知能化した機械システムのうち、利用者の自立生活支援や介護者の介護負担軽減に役立つ機器を総じて「介護ロボット」と呼ぶとしており、既に開発・普及が進んでいる医療ロボットと区別しています。
例えば、手足に装着して症状の改善や悪化予防を図るといった「治療」を目的とした機器を「医療ロボット」と呼ぶのに対し、介護ロボットは、利用者およびその介護者の「生活」の質を改善するイメージで捉えると良いでしょう。今後介護ロボットは、介護サービスを提供する施設・事業所が独自の判断で導入するほか、福祉用具貸与・購入サービスを行う店舗等でも扱われる事が予測されます。

介護ロボットの需要は2018年より高まると予想される

2015年時点の介護ロボット市場規模は24.4億円。2018年2月に5年ぶりにまとめられた「高齢社会対策大綱」では、2020年までに約500億円にまで成長させる目標を打ち出しており、介護ロボットの開発・普及については、厚生労働省と経済産業省が現場のニーズをくみ取りつつ進めていくとともに、介護現場での実証研究の結果をもとに介護報酬の改定や人員基準の緩和等に反映させるとしています。
早速、2018年度の 介護保険法 改正では、センサーや外部通信機能を備えた見守り機器の導入により効果的な介護が提供できる場合について、介護老人福祉施設と短期入所生活介護における夜勤職員配置加算の見直しを行うこととするとしています。
ただし、この内容は、2018年1月段階で公表されている内容を参考にしています。算定要件等の詳細は厚生労働省が発表する最新の情報をご確認ください。

介護ロボットの種類を整理する

介護ロボットには、移乗・入浴・排泄などの日常生活動作を支援する「介護支援型」と、要介護者の癒しや見守り機能を有した「コミュニケーション・セキュリティー型」、要介護者の自立生活をサポートする「自立支援型」の3タイプに大別することができます。なかでも、以下に紹介する6種類の介護ロボットが、厚労省・経産省による開発等の重点分野として挙げられています。

移乗介助型の介護ロボット

ベッドから車椅子、トイレの便座などへの乗り移る(移乗)動作をサポートする機器を指します。介護者が身体に装着し、要介護者を抱え上げる動作をアシストするとともに腰への負担を軽減する機器(装着型)、要介護者自らリモコンやスイッチを操作することで移乗を可能とする機器などがあります。

移動支援型の介護ロボット

高齢者の外出や屋内での移動、立ち座りをサポートする機器を指します。外出の際、荷物を安全に運搬できるようサポートする機器、身体に装着し、屋外での転倒防止やスムーズな歩行をサポートする機器、立ち座りの際、安定した姿勢保持をサポートする機器などが挙げられます。

排泄支援型の介護ロボット

排泄物の処理および排泄時の一連の動作をサポートする機器を指します。例えば、要介護者がトイレへ行くタイミングを予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器やズボンの着脱をスムーズにする機器などが挙げられます。

見守り・コミュニケーション型の介護ロボット

介護施設等において入居者の入床・入眠・離床を感知するセンサーや、在宅介護で認知症高齢者の徘徊を察知する通信機器、転倒検知センサーなどの見守り機器、手で触れると笑い声や泣き声がする赤ちゃん型のロボットやゲーム機能やクイズを出題する機能を搭載したロボットなど、孤立しがちな高齢者とのコミュニケーションを図るロボットを指します。

入浴支援型の介護ロボット

ロボットを用いて、浴槽への出入りや湯船に浸かる動作をサポートする機器を指します。要介護者の家族が入浴する際、その動作を妨げないよう簡単に取り外しができる機器、特別な工事なしに設置できる機器も含みます。

介護業務支援型の介護ロボット

要介護者により良い介護を提供するために、見守りや移乗、排泄介助といった日常的な介護に関する情報を収集・蓄積する機器を指します。例えば、要介護者Aさんの排泄リズムを記録(見える化)し、適切な誘導時間を検討するなど、要介護者の自立生活支援や業務効率の改善に活用される機器が挙げられます。

制度の後押しにより、今後ますます導入が増えると予想される介護ロボット。介護ロボットの研究・開発に新規参入する企業も急増しています。同じ用途でも多種多様な機器が販売されていますので、実際に使用する介護者・介護職員のニーズや現場の実情をよく把握し導入を検討しましょう。

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