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介護事業の市場規模は、介護保険制度が施行された2000年以降 、増加の一途をたどっています。いわゆる団塊の世代が後期高齢者となる2025年には20兆円程度まで規模が拡大すると言われており、今後もさらなる発展が期待されています。その一方で、介護報酬減額による経営悪化や人手不足、同業者同士の競争激化などに悩む事業所が年々増えているのも事実です。経営者は事業の生き残りをかけて、しっかりと現状を分析し将来を見据えた着実な取り組みを図る必要があります。

介護事業の収支差率

平成26年に厚生労働省が実施した介護事業経営実態調査 によると、介護事業所の経営状態を表す指標である「収支差率」は、介護サービス
全体で平均5%以上となっていることが明らかになりました。

これは一般の中小企業の水準(2~3%)を大きく上回る結果であり、増え続ける社会保障費の抑制を図るためにも、収支差率が10%を超え「経営に余力がある」と判断されたサービス(特定施設入居者生活介護 12.2%、認知症対応型共同生活介護 11.2%、通所介護 10.6%、介護老人福祉施設 8.7%など)については、介護報酬の減額対象になることが予測されています。

収差率だけで経営状態を判断されるのは矛盾があると批判を受けそうですが、今後さらに増え続ける社会保障費を抑制するためにも、必要な措置であることがわかります。

介護保険下に実施される介護サービスのうち、居宅サービスの収支差率について平成20年度調査(平成19年度決算分)から平成26年度調査(平成25年度決算分)までの推移を見てみると、若干のマイナスとなった介護老人保健施設を除きすべてのサービスにおける収支差率が、全体的にプラス圏内で推移しています。なかでも訪問介護サービスの上昇率が高く、平成26年度調査では、前年度と比較し約3%プラスに転じています。

介護事業所数の推移

2000年に介護保険制度が施行されて以降、介護事業所数は年々増え続け、2001年には2万件 あまりだった事業者数も、2006年までの間に4万件 以上にまで数を伸ばしました。

ところが、増え続ける社会保障費の抑制を目的とした介護報酬減額の影響により多くの事業所で経営が悪化し、2007年以降は介護事業所の倒産が相次ぐ事態が発生し、その後2013年には、倒産件数が過去最多の46件を記録 しました。介護事業倒産する介護事業所のうち、約7割が設立10年未満で倒産している結果もあり、サービスの質の面で、同業者との競争が激しくなっていることも伺われます。

介護事業所の倒産数は、現在も過去最多の水準で推移しています。2015年の介護報酬改定では、収支差率の上昇が認められた介護サービスを中心とした報酬単価の引き下げ、加算対象の厳格化が実施 され、多くの事業者が思うように収益をあげられない事態に陥っています。今後もさらに厳しい改定が予測されるので、介護職員処遇改善加算などへの対応を早期に進めておくことが大切です。