p_compliance

コンプライアンスとは、企業が「法律や企業倫理を遵守すること」を意味します。介護分野では、労働基準法に従った労働条件の確保や情報開示をすることなどが含まれます。介護保険制度のもと運営する介護事業所には、サービス利用者と従業員がともに不利益にならないような業務管理体制の整備が義務づけられているからです。最近では、労働基準監督署や税務署の監査が厳しくなり、コンプライアンス違反を理由に事業指定取消となる事案も発生していますので、日頃から徹底した管理、指導が必要です。

養護者と介護事業者のコンプライアンス違反の認識の相違

厚生労働省が行った調査によると、平成25年度中に関係機関に寄せられた高齢者虐待に関する相談、通報数は26,000件を超え、約16,000件に明らかな虐待の事実があると判断されました。このうち、要介護高齢者施設などの介護従事者による虐待は、前年度を大幅に上回る221件も発生しており、介護事業所に対する信頼回復と管理体制の強化が求められています。

介護従事者による虐待の問題については、サービス利用者本人または養護者(要介護高齢者の家族など)と介護事業者との間において、虐待に関する認識の違いがあることにも注意しなければなりません。同調査では、介護従事者による虐待のうち、当該施設での介護従事者やケアマネージャーによる通報は全体の4割を超えるのに対し、サービス利用者本人または養護者による通報は全体の2割前後であることが分かっており、サービス利用者本人または養護者は虐待と認識せず辛い仕打ちを受け続けている可能性があるのです。

介護事業所におけるコンプライアンス対策

介護保険制度や社会福祉六法など、介護事業者が遵守すべき法令はもちろんのこと、労働基準法や個人情報保護法など一般的な法令についても配慮した体制を整備しなければなりません。従業員一人ひとりの法令に対する認識を高め、組織内の統制を図るためにも、事業所独自のコンプライアンスルールを策定し、管理を徹底する必要があります。

策定すべきコンプライアンスルールとは、法令の遵守に関わるルールだけではなく、事業所の経営、運営方針に関わるルールも含まれます。たとえば、事故や苦情への対応に関するルール(マニュアル)です。また、介護従事者としての基本態度、マナーなどについて具体的に列挙した行動指針を作成するのも良いでしょう。行動指針を作成すれば、事業所内で実施する新人教育や職場研修にも役立てることができるからです。

介護事業所におけるコンプライアンス体制を整備することにより、サービス利用者や家族との信頼関係が深まり、サービスに対する満足度を高めるきっかけが生まれます。介護事業所は利用者のニーズや地域の実状を良く把握し、コンプライアンス体制を整えていきましょう。